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大学院生、理系博士ブロガーのともよしです(博士課程なう)。有機化学やってます。笑いは大事にしています。

【イソシアネートの反応機構】水やアミンとの反応、人名反応を解説!

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どうも、全合成やってるともよし(@tomo141)です。

今日は、“イソシアネートを経由する反応”の反応機構を解説します。

まず、イソシアネート生成“後”の反応機構(イソシアネートと水やアミンとの反応)を説明した後、イソシアネート生成“まで”(クルチウス転位など)の反応機構を説明します。

イソシアネート生成「後」の反応機構

イソシアネートの反応性

R-N=C=Oで表されるイソシアネート。

電気陰性度の高いNとOによって挟まれている炭素は電子不足となっており、さまざまな求核剤と反応します。

次から、NuHがアミン、水、アルコール、それぞれの場合について説明していきます。

アミンとの反応

イソシアネートにアミンが付加すると、尿素を与えます。簡単ですね。

水との反応

酸性条件下、イソシアネートに水が付加すると、カルバミン酸(R-NH-COOH)が生成します。

が!

カルバミン酸は、容易に脱炭酸が進行するので、結果的にはアミンを与えます。

アルコールとの反応

イソシアネートにアルコールが付加した場合は、カルバミン酸エステル(carbamate, カルバメート、ウレタン)を与えます。

付加するアルコールがベンジルアルコールなら、生成物はR-NH-COOBnです。COOBnは有名なCbzという保護基ですね。Cbz保護されたアミンが得られる、と言ってもいいですね。

同様に、付加するアルコールがt-Buアルコールなら、Boc(COOtBu)保護されたアミンが得られます。

イソシアネート生成「まで」の反応機構

次は、イソシアネートが生成する反応の反応機構を説明します。

窒素から脱離する原子団別にいきましょう。

クルチウス転位(Curtius Rearrangement)とシュミット転位Schmidt Rearrangement

まずは、窒素が脱離する反応、Curtius転位と、Schmidt転位です。


Curtius転位では、酸ハロゲン化物(酸クロリドなど)にアジ化ナトリウムを作用させます。


Schmidt転位の場合は、アジ化水素です。酸性条件でいきましょう。

ホフマン転位(Hofmann Rearrangement)

臭化物イオンが脱離するものがホフマン脱離。

Lossen転位

カルボキシレート(やスルホネート)などが脱離するものはLossen転位。

反応機構の勉強

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↑基礎から順番に、反応機構を仕上げていきましょう。

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