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大学院生、理系博士ブロガーのともよしです(博士課程なう)。有機化学やってます。笑いは大事にしています。

アルコールの保護基まとめ(アセチル基等の保護/脱保護)

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こんにちは!大学院生博士ブロガーのともよし(@tomo141)です。全合成やってるD3です。

今日はアルコールの保護基をまとめます。

代表的な保護基、脱保護の方法を書いていきます。

(あくまで、ぼくの偏った経験をもとに書いた文章なので、ご参考までに。
※間違ったことを言っていたらコメント欄にてご指摘いただけると助かります。)

 

(投稿:2017年1月11日、更新:2017年3月12日)



全合成やってるD3のぼくから、有機系研究室の学生に伝えておきたいことはここに詰め込んでおきました。
関連記事:有機系研究室の学生が最低限知っておくべきこと、D3のぼくから伝えておきたいこと - ともよしブログ

こちらもおすすめ。
関連記事:全合成ドクターのぼくが考える、有機合成化学力を向上させる最も効率的な方法 - ともよしブログ

 

ちなみに、保護基に詳しくなりたかったら、この本↓一択です。

ぼくの場合、保護/脱保護をするときに毎回読み返す、というほど愛用してます

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『Greene's Protective Groups in Organic Synthesis』。

保護基別に、保護の条件、脱保護の条件、その他Tipsがつまっています。

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  • 保護基に詳しくなって、研究を効率よく進められるようになりたい人

という人にはぜひともおすすめの本です

快適な保護/脱保護ライフが送れますよ・ω・

 

まだ読んだことがないという人は、絶対に損しています

一度読んでみて、今日、保護/脱保護マスターへの第一歩を踏み出してください

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アルコールの保護:保護基の分類

代表的な保護基をまとめる。

 

シリル系保護基

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- TBS(tert-butyldimethylsilyl)

が一番一般的。他には、もう少し頑丈な、

- TBDPS(tert-butyldiphenylsilyl)

- TIPS(triisopropylsilyl)

や、もう少し外しやすい

- TES(triethylsilyl)、

結構弱いイメージの

- TMS(trimethylsilyl)

などがある。

 

保護

一般的な保護の条件は、シリルクロリド+塩基。

TBSCl, imidazole, DMF

など。他には、

TBSOTf, 2,6-lutidine

など、シリルトリフラートを用いる条件もある。シリルクロリドを用いる条件で保護できない場合に、シリルトリフラートの条件を用いたりする(かさ高い二級アルコールや三級アルコールに用いる)。

 

脱保護

TBS等のシリル保護されたアルコールの脱保護の条件は、ファーストチョイスがフッ化物アニオンを用いる条件。

TBAF, THF

など。簡単な基質なら5分以内に反応が終わる。

経験上、プロピオレートエステルやブテノリドにTBAFを作用させると、反応溶液が真っ黒になるから、顔が真っ青になる。共役付加から始まって複雑化するんだと思う。

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また、

AcOH, H2O, THF

とか

HCl aq, THF

とか、酸性条件でも外すことがある。TBAFがだめなら酸で。

 

耐性

TBS, TBDPS, TIPSなどは、塩基には割りと強い。TBSとTBDPSが共存する場合、酸でTBSを、塩基でTBDPSを選択的に除去することができる(らしい)。

TMSは、酸にも塩基にも弱い。中性水溶液やシリカゲルカラムクロマトグラフィーでも落ちたり、落ちなかったり。

 

アシル系保護基

- アセチル(Ac = COMe)

- ベンゾイル(Bz = COPh)

- ピバロイル(Pv = COCMe3)

など。

 

保護

アシルクロリド+塩基で保護。

AcCl, pyridine溶媒とかが多い。

 

AcCl, NEt3の条件は、まずAcClとNEt3が反応して生成するケテンを経由する。

ケテンにアルコールが求核付加してアセチル化、という具合だ。

 

脱保護(アセチル基)

K2CO3/MeOH/H2Oや等の塩基。

 

アセタール系保護基

MOM(methoxymethyl)やTHP(tetrahydropyranyl)など。

 

保護

NaH, MOMClが多い。

 

脱保護

水存在下、酸処理をおこなうことで脱保護。

 

エーテル系保護基

エーテル系はベンジル、PMB、アリル、トリチルなど様々な保護基がある。

エーテル系の保護基は、その種類によって用途が全く異なるからおもしろいよ。

 

ベンジル

水素添加で脱保護できる。

 

p-メトキシベンジル(PMB)

DDQなどの酸化剤を用いて、酸化条件で脱保護できる。合成ルートに酸化反応がない場合、比較的安定であるため、多用される保護基。

 

アリル

水素添加で脱保護できる。 

 

トリチル

酸性条件で脱保護。 

 

 

アルコールの保護:保護基選択の一例

保護基を選択する際は、ある保護基に注目して、

  1. 脱保護の際に、他の置換基と反応するかどうか
  2. 保護してから脱保護する間のルートで、保護基が外れてしまわないか
  3. 保護の条件を考えて、収率良く保護できるのか

という風に考えていく。

 

経験を積んでくると、なんとなく、適切な保護基が分かってきてしまうけど、慣れないうちは上に上げた保護基をひとつひとつ確認していく。

 

どの保護基を使うかどうか?というのは、例えば、下のように考えていく。

(条件をクリアしていればそれを使うし、条件をクリアしていなければ次の保護基を検討する。)

 

とりあえずTBS(シリル系保護基)が使えるかどうか

コスト面、安定性、保護・脱保護の容易さの観点から、TBS保護はバランスのとれた保護である。というわけで、とりあえずTBSが使えるかを考える。

①脱保護できるか?

時、TBAFなどのフッ化物イオンを用いる条件に耐えられる基質かどうかをみる。共役付加型の基質だとアウト。その場合は酸性条件で落とせるかどうかを考える。

②保護基が外れてしまわないか?

保護から脱保護までに、酸性条件の反応を減る場合、落ちることがある。

③保護

TBS保護はわりとできてしまうけど、できる基質か、考える。

 

酸性条件を経るルートなら、アセチル(アシル系保護基)を考える

…とかなんとか考えて、最適な保護基を決めていく。 

保護基選択のフローチャートとかあるんですかねぇ、出来上がったら書き足します。

 

 

 

 

ジオールの保護基:環状アセタール・ケタール

アセトニド(イソプロピリデンケタール)

一番一般的なジオールの保護基であるアセトニド。

1,2,3-トリオールでは、1,2-ジオールの保護が優先する(1,2-ケタールの生成が優先)。

(ベンジリデンアセタールでは、1,3-アセタールの生成が優先する)

保護

ジオールのアセトニド保護の一般的な条件は、

TsOH (cat), Me2C(OMe)2 (2,2-dimethoxypropane)

など。

脱保護

アセトニド保護されたジオールの脱保護の一般的な条件は、

- DOWEX, MeOH
- AcOH, H2O

など。

メチレンアセタール

アセトニドの関連保護基としては、メチレンアセタールがある。

アセトニドのジメチルがないやつね。

保護

保護の条件は、

- (パラ)ホルムアルデヒド+酸
- CH2Br2+塩基

など。

脱保護

脱保護は、酸性水溶液条件で。

エチリデンアセタール

アセトニド、メチレンアセタールの関連保護基、エチリデンアセタール。

モノメチル置換基されたメチレンアセタールね。

(エチル:エタンから一個Hをとった置換基)
(エチリデン:エチルからもう一個Hをとった置換基ってことね)
(だから、イソプロピルからもう一個Hをとった置換基があるアセトニドは、イソプロピリデンケタールね)

保護

保護は、

- アセトアルデヒド+酸
- CH3CH(OMe)2(アセトアルデヒドジメチルアセタール)+酸

など。

脱保護

脱保護は、酸性水溶液。

ベンジリデンアセタール

ベンジリデンアセタールと聞いて、構造が分かるだろうか?

ベンジルからHを一個とった置換基だから、モノフェニル化されたメチレンアセタール、って感じね。

保護

ジオールのベンジリデンアセタール保護は、

- PhCHO, ZnCl2
- PhCHO, 酸

などが一般的。

冒頭でも書いたけど、ベンジリデンアセタールを1,2,3-トリオールにかけると、1,3-アセタールの生成が優先する。

脱保護

ベンジリデンアセタールのかかったジオールは、アセトニドと同様、酸性水溶液条件で脱保護が可能。

加えて、アセトニドとは異なり、水素添加によっても脱保護が可能。

部分的な脱保護(ベンジルエーテルの生成)

これもベンジリデンアセタールの特徴。

ベンジリデンアセタールで保護されたジオールは、フリーの水酸基およびベンジルエーテルを持つ化合物へと変換できる。

条件は、還元的な

- DIBAL-H
- LAH

や、酸化的な

- tBuOOH, CuCl2
- ozonolysis

などがある。

 

 

 

アルコール・その他の保護基に詳しくなりたい人はこれを読め

うちの研究室で“保護基の本”と言えばこれがでてくる。

『Greene's Protective Groups in Organic Synthesis』だ。

ジオールに限らず、アミンもケトンもほかいろいろ、保護/脱保護の条件が、反応式や参照論文付きで網羅されている。

ぼくは合成で保護基を使うことになったら、必ずこの本を読んで、どの保護基、どの条件が最適か?というのをよくよく考えるようにしている。

おかげで実験数が無駄に増えたりせず、遠回りすることなく、快適な保護/脱保護ライフを送れている。

それぞれの保護基の耐性や利用法などもたくさん記述があるから、研究で保護基をうまく使えるようになりたい人は、ぜひとも持っておくといいと思う。

amazonなら試し読みもすることができる。

有機化学をやっているのなら、これを知らない人は損している。

見ておいたほうがいい。

 

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